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登進研バックアップセミナー61・講演内容

不登校―解決のカギをにぎる親と子のあり方とは?

田村節子

講師:田村節子(学校心理士・臨床心理士)

1. 親と子が幸せになるXの法則

今日は、みなさまと一緒に、「親子関係が幸せになる法則」について考えてみたいと思います。

田村節子まず、右の図を見てください。子どもは、生まれた直後は自分で歩くことすらできませんから、親は、おむつを取り替えたり、ミルクを飲ませるなど、自分の力をめいっぱい子どもに注がなければいけません。そのため図のように、親の力は最大のところからスタートします。しかし、小学生、中学生と成長するにつれて、子どもは自分の力で外に出たり、友だちも増えてきます。そうなると親の力は徐々に小さくなっていきます。
一方、子どもの力(自分で育つ力)は、最初は赤ちゃんですから、自分で自分のことをする力はほとんどありません。でも、歩けるようになり、友だちと遊ぶようになるにつれて、その力は少しずつ大きくなり、図のように右肩上がりになっていきます。

その結果、親と子の力の線が「Xの形」で交差するようになります。私はこれを「親と子が幸せになるXの法則」とよんでいます。この図は子どもが自立していく形を示すものですが、自立とは自分で考え、自分で行動し、自分で責任をとることです。子育ての最終目標は、子どもが自立していくことにあります。

2. 子どもは限りなく他人に近い存在

「Xの法則」で親と子の力が交わるところ、これがいわゆる「反抗期」です。それまでは親の力がかなり強かったけれど、子どもが大きくなるにつれて「私のことは私に任せて」「あれこれ口出ししないで」と思うようになります。そこで親子がぶつかるわけです。
反抗期の子どもは、「うるせえ」「べつに」「くそばばあ」といった言葉を口にします。これらを私は「思春期語」とよんでいますが、その意味を翻訳すると、「お父さんお母さん、これからは自分のことは自分で考えるし、困ったときは助けを求めるから、それまではそっとしておいて」というメッセージだと思います。

そして、反抗期のあとは、親の線より子どもの線のほうが上になっていきます。この時期、子どもは自分で考えて行動し、自分で責任をとる方向に進みたいわけですから、なかなか親の思いどおりにはなりません。親にとってはいい意味で、あきらめなくてはいけないことがたくさん出てきます。
特に母親は、子どもが自分の体から生まれた存在であるだけに、「自分の思いどおりになるはず」と錯覚しがちです。実際、私もそうでした。でも、あるとき、子どもは「限りなき他者性」をもっている存在であると気づきました。つまり、自分の体から生まれてきた存在ではあるけれど、自分とは別な感覚と人格をもち、別な人生を歩む、限りなく他人に近い存在だということです。それを知ったとき、私はすごく気持ちがラクになり、子どもと適切な距離をとれるようになったのです。

3. 親と子の幸せが遠くなるYの法則

次に、右の図の「幸せが遠くなるYの法則」について説明しましょう。

田村節子Yの字が横になっているように見えるため、これを「Yの法則」と名づけました。
Yの法則は、途中まではXの法則と同じですが、反抗期を迎えたあとも親の力が小さくなっていきません。つまり、親は、子どもが自立していくことを認められない状態が続いているということです。このような場合、子どもは、親の力が強い圧力になっていて、それを突き破って大きくなることができません。その結果、子どもには、不満やイライラ、怒りやストレスがたまっていくことになります。 では、子どもにとって、親の圧力とは具体的にどんなことを指すのでしょうか。それは、①過保護、②期待しすぎること、③厳格すぎること、の3つになると思います。

1. 過保護
「過保護」を「過干渉」との違いのなかで説明してみます。
過保護とは、親が子どもの手と足になってしまうことです。たとえば、子どもに「おやつはどこにあるの?」と聞かれたとき、「○○にあるよ」と答えるのではなく、実際におやつを持ってきてあげる。つまり、子どもが自分でできるのに、代わりにやってしまうことが過保護です。
一方、「過干渉」とは、子どもの頭になってしまうこと。子どもが考えるべきことを、親が考えてあげてしまうことです。たとえば、子どもが「塾に行きたい」と言ったとき、親がいろいろ情報を集めてきて、「あそこの塾がいいよ」と言ってしまう。つまり、親が答えを出してしまい、子どもが自分で考え実行することをさまたげてしまうのです。具体的には、「ああしたら」「こうしたら」といったかかわり方、言い方が過干渉になりがちです。

2. 期待しすぎること
このことは、親が思っている以上に子どもの重荷になっているようです。たとえば、子どもに関係したことで親がため息をついたりすると、そのため息は、子ども自身が親の期待に応えていないからだと感じて、つらくなったりします。

3. 厳格すぎること
親として、ある程度の厳しさは必要ですが、あまり厳しすぎると子どもはつらくなってしまいます。では、その逆の放任はいいのかというと、放任も子どもにとって寂しかったり、つらかったりすることが多いのです。実は厳格すぎることも放任も、別の角度からみると、まったく同じことなんです。つまり、子どもにとっては、どちらも「自分の気持ちをわかってもらえない」という思いを抱く点では同じということです。

4. 親子関係の軌道修正はいつでも始められる

ここで、「幸せが遠くなるYの法則」の話に戻りますが、過保護だったり、過干渉だったり、期待しすぎたりする親の圧力の根底には、すべて「子どもが苦労しないように」という親の愛情があります。ところが、その愛情が重荷や圧力となって、子どもが自分の意志で動けなくなってしまうのが「Yの法則」です。

ただし、「Yの法則」のような状態になってしまっても、親子関係の軌道修正は、親がそのことに気づいたときから、いつでも始められます。それによって子どもが急に変わることはないかもしれませんが、修正しようとする親の姿勢が伝われば、必ず関係性も変わっていくはずです。
では、親のかかわり方の軌道修正は具体的にどうしたらよいのでしょうか。これには、次のような2つのポイントがあります。

1. 子どもが安心感を得られるようにかかわる
たとえば、別室登校を始めようとする際、親は「別室を用意してもらったから、これで安心して通えるだろう」と思いがちです。しかし、子どもにはさまざまな不安があります。どんな時間帯に行ったらいいのか、別室には誰がいて、誰が自分の面倒をみてくれるのか、帰りたいときは帰してくれるのか……。そうした不安を一つひとつ解消してあげないと、子どもは本当に安心して別室登校する気持ちにはなれません。このように、子ども自身が安心感を得られるような条件を整えてあげることがポイントのひとつです。

2. 親の何げないふるまいが子どものモデルになる
子どもは、親の様子を敏感に察知する能力があるといわれています。子どもという生物は、親がいないと生きていけないので、いわば生存本能として親の顔色に敏感にならざるをえないのです。子どもは、私たち親の様子をよく観察しています。
私が尊敬する精神科の先生によると、「子どもは親の言うとおりになるのではなく、親のようになる」そうです。ちょっとイヤな感じがしますが(笑)。ですから、親が口では「学校に行けなくても気にするな」と言いながら、本音ではそう思っていないとしたら、子どもだって「学校に行けない自分は、やっぱりダメな人間なんだ」と考えても不思議はないでしょう。

親は、子どもが不登校になると、親戚や近所の人からいろいろ言われたりしますから、世間体だって気になります。でも、そんなときは、ぜひ、「心のハサミ」を取り出してください。心のなかにハサミをイメージして、そういう世間の雑音を切り取ってしまいましょう。子どものことを心から心配して、最後まで責任をもってかかわってくれる人が言うことは聞くとしても、興味本位に心配しているふりをしている人の言うことなど聞く必要はありません。

5. 子どもが安心感を得られるようにするためのポイント

●子どものいい面に眼を向ける

子どもが不登校になると、どうしてもいい面より悪い面に眼がいきがちです。そういう見方が子どもに伝わってしまうことが多いので、意識的にいい面をみるように心がけてください。もし、悪い面ばかり眼につくようなら、それをプラスに転換するような逆転の発想をしてみましょう。たとえば、臆病な子(悪い面)は慎重な子(いい面)、人の顔色ばかり見ている子(悪い面)は今でいう空気が読める子(いい面)ともいえます。そうやって、その子のいいところ探しをしてみてください。

●今までやってみてよかったことを、またさらにやってみる

私たちは、悪いことが起こると、「原因探し」や「犯人探し」にやっきになりがちです。でも、原因がわかったからといって、問題が解決するとは限りません。それよりも、「あること」をやってみて、いい結果が出たときには、なぜうまくいったのかを考えてみると、そこに解決のヒケツが隠されていることがあります。○○をしたら「わが子がうれしそうな顔をした」としたら、それをまたやってみましょう。

●子どもの気持ちを聴く

思春期になると、子どもは本当の気持ちをなかなか話してくれませんが、ひとつの行動の背後には、さまざまな心の状態が隠れています。そうした心のなかのモヤモヤ、イライラ、SOSのようなものを聴いてあげることが大切です。親は、子どもの行動面だけを見て叱ったり、「どうしてそんなことをしたんだ!」と理由を聞いたりします。ところが、その理由の背後には、つまらないとか不安とか、あせっているなどの感情があります。そうした根本にある気持ちや感情に耳を傾けることが大切です。
子どもは、信頼できる人に自分の気持ちをわかってもらえると、気持ちがすごく軽くなります。そういう精神的な余裕が生まれると、新しい何かをしようという元気も出てきます。これは不登校の子どもたちを理解しサポートするうえで、とても大切なポイントです。

●子どもの未来に対して明るいイメージをもつ

私たちは、未来に対して明るいイメージをもつことによって、そのイメージの実現に向けて具体的に行動しようという意欲がわいてきます。子ども自身が「いい時間のイメージ」をもてれば、それに越したことはありませんが、まだ、その段階には到達していないのであれば、とりあえず、お父さんお母さんが子どもの将来に対して、子どものいい面を見つけたりすることによって、いいイメージ、明るいイメージをもってほしいと思います。

講演風景

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